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クローバー5号(10月7日)

視覚障害者と掃除~実践者の話から~
 掃除は大変な作業です。少し気を抜くとあちらこちらがほこりだらけになってしまいます。視覚障害者はどのようにして掃除を行い、日常生活を送っているのでしょうか?今回は、視覚障害がある本校職員から話を聞き、家庭での掃除の一例を紹介します。

【掃除機①】 
Q:どこまで掛けたのか分からないときは、どうしているの?
A:畳の縁や折り目を目安にして行います。

【掃除機②】 
Q:部屋の中央にテーブルがあるときは、どうしているの?
A:テーブルの位置を頭にイメージし、角を時々手で触り、自分の立ち位置を確認します。4つのブロックに分けて行い、掛け残しがないよう重ねて行います。

【風呂掃除】
Q:汚れがどこにあるのか分からないときは、どうしているの?
A:浴槽面にスポンジを掛けるときは、左上から真下に、そして少しずつ右側へ移動します。次に左上から右に、そして少しずつ下側に移動します。自分のルールを決め、焦らず、繰り返し行い、洗い残しがないように行います。

【拭き掃除】 
Q:床は平らで特に特徴がないですが、どうしているの?
A:横に移動して拭くときは、効率が悪くてもAのように重ねて、拭き残しがないよう、丁寧に行います。

 

便利な掃除グッズ
「部屋の掃除は苦手です!」(40代、男性、全盲。)
自分が自宅で行っているのは、湯船の掃除とリビングの掃除です。湯船の掃除は範囲が両手を広げた範囲内ですので、得意ではないものの、苦手でもありません。
問題はリビングの掃除です。
いつも家族にだめ出しされてしまいます。家族が言うには隅のほこりがうまく取れていないようです。どうしたらいいんでしょうか?猫もいるので砂などの片付けも大変です。
掃除機の使用で気をつけているのは、同じところを何度も繰り返し掃除機をかけることですが・・・?
そんな視覚障害者の方へこんなのはいかがでしょうか。

《床ふきロボット ~ルンバ~》
アメリカのアイロボット社が開発した円盤型のお掃除ロボットです。
壁や家具にぶつかりそうになると減速したり、椅子の脚のような細かなところは小回りを利かせて丁寧に掃除します。掃除を終えるとホームベースに戻り、充電を再開します。
 取扱説明書は音声(一般CD2枚)が付いてきますから安心です。
ルンバ 視覚障がい者モデル
http://yougu.nittento.or.jp/product1375_130.html

洗濯の時はこれが便利!《洗濯洗剤 ジェルボール》
洗濯をするとき、液体洗剤の量を量るのに苦労します。
そんなとき、ジェルボールが役に立ちます。固体なので、量が分かりやすく、間違いがありません。
最近は、様々な香りのものがあり、柔軟剤入りのジェルボールも販売されているのもうれしいです。

 

ワンポイントアドバイス~教室編③~
見えにくさのある子どもの座席は、どの配置がよいのでしょうか。

【座席についての配慮】
 見えにくさのある子どもの座席は、「一番前の席がよいだろう」と思われがちです。しかし、その子の視力の程度、視野の狭さやまぶしさを感じるかどうかなどの見え方、単眼鏡や拡大読書器、斜面台付きの机や書見台を使用するかどうか、授業の中で教師や支援員の先生がどのくらい支援する必要があるかで座席の位置は検討されます。
座席の配置を決める際には、本人と実際に教室で、確認しながら試してみることが大切です。

1 まぶしさがある子ども
 まぶしさを感じる場合は、窓側の座席列を避けた座席で、視力の程度を考慮して前列か2列目を試してみます。ただし、廊下側の座席になると、黒板に光が反射したり、逆光になってしまったりして、かえって見えにくくなる場合があります。その際は、カーテンやブラインドを利用して調整することも大切です。

2 単眼鏡を活用する子ども
 廊下側の座席で単眼鏡を使用する場合、黒板の手前(廊下側)に書かれている文字と、奥(窓側)に書かれている文字を見るときでは、ピントの調整をその都度行わなければなりません。※窓側の座席でも、同様にピント調整が必要となります。
ピント調整にまだ不慣れな場合は、調整する時間を保障するか、ピントがほぼ一定の状態で使える中央付近の座席が望ましいです。

3 視力の左右差が大きい子ども
 例えば、右眼の視力が0.1で、左眼の視力が0.5など左右の視力の差が大きい場合、中央付近の座席列から黒板に向かって1つから2つ右にずらした座席を試してみましょう。

4 その他
 書見台や拡大読書器を使用する場合は、周囲の子どもたちが黒板を見ることを妨げないような配置にする必要があります。
併せて、弱視の子どもは、基本的な学習道具と別に、視覚補助具など様々な道具や用紙サイズのプリントを使用することがあります。その場合は、スペースに余裕があれば座席の隣にもう1つ机を置き、学習道具の置き場所を確保できれば、効率的に学習を進めることができます。


学校で行う視力検査「370方式」
 一般に視力0.7以上(A判定、B判定)であれば、学校の教室のどこからでも、黒板の文字は読めるといわれます。言い換えれば、視力0.7を切る(C判定、D判定)と、教室の後ろの席からでは、黒板の文字がぼやけます。D判定では、一番前の席でも見えにくいです。参考図書:氏間和仁編著『見えにくい子どもへのサポート』読書工房


校内のプロフェッショナルの紹介
~視覚障害訓練等指導員~
視覚障害訓練等指導員  落合 久貴子
視覚障害生活訓練等指導員は、視覚障害がある人が自立した生活を送ることができるよう指導・支援にあたります。主な指導・支援は、視覚障害がある人の三大不自由にあげられる「移動・歩行」「日常生活動作」「情報・コミュニケーション」で、家庭生活や社会生活を過ごす上で必要な動作が多く含まれます。実際には、「パソコン」「白杖歩行」「調理」「点字」「日常生活動作(湯茶動作)」「その他」を指導・支援する機会が多くあります。
実際の指導では、その人の生活スタイルや動作、価値観を基本に取り上げ、大切にしながら進めようと心掛けています。これは、10人いれば、10人それぞれの生活スタイルや動作、価値観があり、指導者自身もその一人でしかないからです。そのため、指導・支援の際は、ご本人の普段の動作を確かめ、どこに課題や困難があるのか、一つ一つの動作について行動分析をします。視覚障害による動作の制限を軽減するように、視覚からの情報だけでなく、その他の感覚や情報活用を試み、その方に合った方法を一緒に探りながら、動作の改善や新たな動作の獲得を目指します。
☆ 次号、実際の指導・支援で取り上げた日常生活動作や歩行学習を紹介します。

 

図書の紹介
 調理実習の指導の仕方を大きく三つにまとめて編集してあり、段階的に指導できます。また、様々な調理メニューがあり、イラスト表示で分かりやすくなっています。
「ワンポイントレッスン」では、保存方法や片付けの手順も示していて、私たちの調理でも参考になる内容になっています。
「視覚障害者の調理 実習ハンドブック」元視覚障害日常生活訓練研究会 編著
定価2,100円(税込)


御相談のお問い合わせは 
 秋田県立視覚支援学校 ロービジョン支援センターへ御連絡ください。 
 相談支援担当  菊地雄平 佐藤加奈子 長崎雪子 落合久貴子
 

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