視覚障害とは、視力や視野、色覚などの視機能が十分でないために、全く見えなかったり、見えにくかったりする状態をいいます。一般に両眼の矯正視力が0.3未満になると、黒板に書かれた文字や教科書の文字などを見るのに支障をきたします。さらに、学習の場面で主として視覚を用いることが可能かどうかで、全盲と弱視とに分けられます(たとえ裸眼視力が0.01以下であっても、眼鏡等での矯正視力が1.0以上見える目は弱視とは言いません)。視覚障害のうち、教育的な立場から特に問題になるのは視力の障害ですが、視野や色覚等に高度の障害がある場合も教育的配慮が必要です。
視覚障害は、情報の障害であり、行動上、さまざまな制約を受けます。視覚障害における「3大不自由」として、次のものが挙げられます。
・歩行(安全に能率よく移動すること)
・日常生活動作(食事、衣服の着脱、整理整頓などをスムーズに行うこと)
・文字処理(普通の文字や図、絵などの内容を理解すること)
これらの「不自由」は、不可能を意味するのではありません。
視覚障害は、教育、医学、福祉などの立場によって定義が異なります。教育的な観点では、教育活動で用いる学習手段から、次のように分類しています。
日本の視覚障害者は約30万人といわれています。そのうち全盲の人は約10万人で、残りの人たちは、ロービジョン(教育的弱視あるいは社会的弱視)と呼ばれています。盲児と弱視児は、次のように定義されます。
視覚認識に影響を及ぼす見えにくさの主な状況は次のとおりです。多くの弱視児は、見えにくさの要因を複数抱えており、見え方の個人差を大きくしています。
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<正常な見え方>
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<白濁または霧視>
解像度の低い見え方
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<暗順応障害>
薄暗い所に目が慣れず
暗く感じて見えにくい
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<羞明(しゅうめい)>
まぶしくて見えにくい
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<正常な見え方>
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<中心暗点>
見ようとする所が
見えなかったり
歪んで見えたりするため文字や表情が
分かりにくい
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<視野狭窄>
見える範囲が狭い
境界は意識されず
狭いことに
気付かないことも
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疾患の特徴 |
症状の特徴 |
緑内障 |
眼球内部からの圧力により視神経が圧迫され、視野が欠けてくる病気。日本人は眼圧が高くないのに発症する「正常眼圧緑内障」が多い。先天性のものもある。欠けた視野や低下した視力は、治療によっても回復しないため、早期発見早期治療が必要。 |
不規則な形で視野が欠けたり、部分的に見えない部分ができたりするが、自覚症状はほとんどない。進行すると視力も低下する。 |
糖尿病網膜症 |
糖尿病の3大合併症の一つ。高血糖が続くことで網膜の血管が詰まったり傷ついたりし、網膜の機能が低下する。進行すると治療によっても視力の回復は難しいため、早期からの定期管理が必要。 |
視力低下の自覚症状が出た時には、既にかなり進行している。コントラスト低下、羞明(眩しさ)も起こる。 |
黄斑変性 |
黄斑部(中心部分の網膜)が変性し、見ようとする場所が見えにくくなる。 |
見たいところが見えなかったり歪んで見えたりする(中心暗点)。周辺は普通に見えるので移動はできるが、文字や人の表情がわからなくなる。 |
網膜色素変性 |
網膜の光を受け取る細胞が変性し、徐々に視野が狭くなる。 |
薄暗いところで見えにくい。視野が狭くなると物や人にぶつかったり、落とした物が見つけられなかったりする。知らない場所では移動が難しくなるが、視力が保たれていれば読書は可能。進行すると視力も低下する。 |
未熟児網膜症 |
網膜血管の未熟性による網膜疾患。自然に治まることが多いが、網膜剥離を起こして重篤な障害を残すこともある。 |
視力、視野の障害のほか、斜視や近視が多い。偽斜視(見かけ上の斜視)のこともある。 |
網膜剥離 |
疾患や外傷などで網膜が剥がれる。 |
剥離した網膜に対応する視野が欠損する。網膜の中心部が剥離すると高度の視力障害を残す。 |
白内障 |
目の中にあるレンズ(水晶体)が濁る。先天性の場合は乳児期からの治療・管理が必要。 |
視力障害、羞明。手術により水晶体を取り除いた場合は、代わりに人工レンズを入れるか、コンタクトレンズまたは眼鏡で矯正する。 |
●視覚障害の症状に応じた配慮点
症状 配慮点
視野の中心が見えにくい
視野が狭い
羞明(眩しい)
暗いところで見えにくい