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R5クローバー4号

 目指せ!小学部の単眼鏡の達人~自立活動の指導実践から~

 本校は、全盲や弱視(見えにくい状態)の幼児児童生徒の教育・支援を行っています。全盲や弱視といっても、一人一人見えにくさが違うため、一人一人の見え方を確かめた上で、どのような視覚支援が必要か検討する必要があります。
 今回は、弱視の幼児児童生徒の見えにくさを補う方法の一つである単眼鏡の指導実践について紹介します。『単眼鏡』は遠くを見る望遠鏡のようなもので、小型で携帯性に富んでいることから、身に付けて、使いたいときにすぐに使える、身近で活用場面が多い視覚補助具として位置付けられています。しかし、黒板のような広い範囲の中から必要な情報をすばやく探し出し、ピントを合わせて見るなど、単眼鏡を十分に使いこなせるようになるまでには、様々な練習が必要です。
 次に挙げる『目指せ!小学部の単眼鏡の達人』は、「教師と親のための弱視レンズガイド」(コレール社)にある基本プログラムを、対象児童の実態や習得段階に合わせて組み直した単眼鏡の練習プログラムで、本校の自立活動専門員である視能訓練士の助言を受けて検討したものです。10のミッションを通して、単眼鏡の「持ち方」「ピント合わせ」「探索の仕方」等を身に付けることを目指しており、それぞれのミッションで取り上げる内容や通過タイム(合格ライン)が異なります。対象児童は、小学部1年から2年間にわたって自立活動の時間に取り組んでおり、現在ミッション7の練習中です。
『目指せ!小学部の単眼鏡の達人』
 
図:単眼鏡の練習プログラムのプリント
ミッション2「まがった せんを たどって よもう」(小学部1年のR4年10~12月に実施)
図:スタートの白丸から線をたどってひらがなを読むプリント
図:ミッション通過タイムのグラフ
毎時間のタイムを記録し、グラフにした表。★印は、通過タイムをクリアしたもので、3回連続で合格。
 
 単眼鏡の使い方を習得すると、教科学習で「正確さ」と「スピード」をもって活用できます。また、横断歩道を渡る際に信号を確認するなど、様々な生活場面で遠くにある情報を探し出して見ることができます。ただし、習得するまでには継続して練習に取り組み、日常的にも使用を続けることが大切になります。将来の姿を見据えて必要なニーズを整理し、身に付けたいことを自立活動の学習で段階的に取り上げることができるよう、学習計画を立案していきたいと思います。
<教諭(兼)教育専門監 落合 久貴子>
 
教材・教具の工夫~社会科の指導実践から~
視覚障害者は地図の読み取り、地理的関係の理解に多くの時間を要します。そのため、地図や地球儀は、生徒の実態に適した分かりやすさがあり、学習のねらいに応じたものを準備し学習に活用しています。今回紹介する自作地図と地球儀は、高等部普通科の全盲の生徒の世界史B「一体化する世界」の学習で使用したものです。
 
ア 自作地図で工夫した点
・両手で触って捉えられる大きさにして、学習に必要な地域を限定的に提示した。 
・歴史の流れで変化する国が分かるように取り外しできるシートを使い、国の位置や広さが分かるようにした。
イ 地球儀で工夫した点
・ヨーロッパ人が発見した航路をロープで示して、触って分かるようにした。
・地球儀を回転させながら触ることにより、地球の動きや世界の広さを感じ取れるようにした。
〈京屋 敦〉
 
学習環境を整えるための支援~サテライト教室の実践から~
 今年度、県内3地区に設置しているサテライト教室では、見えにくさによる学習上または生活上の困難さを抱える幼児児童生徒やその保護者、学級担任、成人の方の相談に応じています。
 昨年度まで2年間実施した由利本荘地区のサテライト教室では、対象児童の入学に伴い、初めに学習環境を整える支援を行いました。まぶしさを感じやすく、視界に入った物への興味が強いという児童の実態から、以下のように学習環境を整えました。
 
・開放感がある校舎で窓が大きく教室内がまぶしかったので、遮光カーテンを閉め、廊下側の窓も目隠しする。
・一日の見通しをもてるように、自分で操作できる予定表を準備する。見やすいように黒地に白抜きの文字で表す。
見るべきところが分かるように目から入る情報を整理、制限する。(タイポスコープの活用)
 
 学習環境を整えたことで、対象児童が集中して学習に向かう時間が増えました。また、自身の見え方を理解し、自分からカーテンを閉めたり、照明を調整したりする様子が見られるようになりました。現在、対象の児童は本校に転入し、同様の学習環境で学習をしています。 
〈内藤 聡子〉
本文はここまで

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