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クローバー4号(12月5日)

音楽ノススメ   音楽科 宮澤 知明
 何につけても人の好みは様々で、それを傍からあれこれ言うのは野暮というもの。音楽についても同じことでしょう。まして、どんな音楽が好きだろうと、そのジャンルの優劣を比較するなどは意味のないことです。とは言っても、曲を作る上での技法や色々な楽器ごとの演奏技法という面を見ればもちろん難易度の違いはあります。でも、そういった難易度それ自体が音楽の値打ちとイコールになる訳ではありません。値打ちを決めるのは自分です。肝心なのは聞こえてくる声、音、響きであって、それらが心の中に何を引き起こすか、ということなのですから。
 好みとは、その人の心の求めの現れなのだと思います。自分の心の姿をそれによって感じることができるもの、それが「好みの音楽」というものなのでしょう。音楽は大げさなものではありません。聴くこと、歌うこと、演奏すること、それらすべてがその人の表現であり「音楽をする」ことです。普段の生活に音楽があり、それが一生の楽しみになれば幸せなことです。その一生の楽しみの一つとしてなにか楽器をひとつ嗜むのはどうでしょうか。CDでもラジオでもよく聴くしカラオケも楽しい、ユーチューブも便利だし、という人でも楽器は無理だなあと敬遠することがしばしばです。一方で、子供の頃にピアノを習ったけど辞めてしまったのが残念だ、続けていればよかったという声もよく聞きます。楽器に惹かれる気持ちは実は誰にでもあるのではないでしょうか。
 私たちの視覚支援学校でも、成人、それも50代60代の生徒が、どうしても弾きたい曲がある、と音楽の時間にピアノに取り組むことがしばしばあります。たとえ一曲でも弾けるようになった時の表情には満足感がいっぱいです。小中高を問わず若い生徒たちもピアノが好きで熱心に向かい、楽譜なしに耳を頼りに音を覚えて弾きこなすのには驚かされます。音に自分の何かを託している、そんな姿にも感じられます。でも、惜しいことにピアノは携帯できません。それに両手の指を別々に動かすのは厳しいし独習するにはちょっとハードルが高い、楽しむまでに時間がかかるなどの制約がどうしても付いて回る。せっかくの意欲も空回りしがちです。そこで考えるのは持ち運びできる楽器のメリットです。併せて目のことも考慮します。メカニズム満載の管楽器のように組み立ての手間もいらず、弾きたいときにひょいと取り出して楽しめるのがいい。メンテナンスも楽なのがいい。そういうことになります。
 幸いなことに世間にはポケットに入るものをはじめ手足のようになじむジャストサイズの楽器が沢山あります。昔流行ったハーモニカなどはシンプルなのに呼吸がそのまま音楽になってくれる。また、ギターなら弾き語りも夢ではありません。ウクレレはポコポコと優しい音で心を和ませてくれます。打楽器のボンゴなどは音楽を聴きながら自由にそれに参加できます。和楽器なら尺八もあります。首振り三年とも言われますが、その奥の深さはまさに一生ものでしょう。民謡や三味線とのコラボレーションにも発展します。
 これらはほんの少しの例ですが、親しめばどれも自分と一体となる楽器です。自分の好みに合わせてずっと付き合える楽器をさがしてみたらどうでしょう。音の出るものがいつも傍にあると生活が変わります。広がります。歌うこと聴くことに愛用の楽器が加われば、独りでしみじみもよし誰かと合奏するもよしと「音楽をする」喜びの全てが手に入ります。よろしければご相談をどうぞ。
 

視覚障害者スポーツの紹介
 視覚障害者向けのスポーツはたくさんありますが、その中からいくつか紹介します。

サウンドテーブルテニス  ~卓球を視覚障害者用に工夫したスポーツ~
 ネットの下を転がして打ち合う卓球で、選手はアイマスクをし、鉛の粒が入ったボールの転がる音を聞いてプレーする。相手からのボールが自コートのエンドフレームに当たる前に打ち返してラリーする。打ち返せずにエンドフレームに当たると相手の得点になる。

フロアバレーボール ~バレーボールを視覚障害者用に工夫したスポーツ~
 ネットの下を転がして打ち合うバレーボールで選手は1チーム6名。前衛3名と後衛3名でプレーする。前衛はアイマスクを着用し、ネット際にしゃがんで構え、相手からのボールをブロックしたり、スパイクしたりする。後衛3名は弱視者や晴眼者が担当し、ボールの動きやゲーム状況を見ながらプレーする。

グランドソフトボール ~野球を視覚障害者用に工夫したスポーツ~
 1チーム10名で、その内4名以上がアイマスクをつけ、ピッチャーは必ずアイマスクをつける。キャッチャーはホームベースの位置を手ばたきで知らせ、そこに向かってピッチャーはボールを転がし投球する。バッターは転がってきたボールの音を頼りにストライクかボールかを聞き分けて打つ。

ブラインドテニス ~テニスを視覚障害者用に工夫したスポーツ~

 直径9cmのスポンジボールの中にサウンドテーブルテニス用のボールを入れた音が出るボールを使う。コートはバドミントンコートの大きさで、障害の程度により、B1~B3およびオープンクラスに分かれる。B1選手はアイマスクをする。B1は3バウンド、B2、3は2バウンド、オープンクラスは1バウンドで打ち返す。

 今年愛媛で行われた全国障害者スポーツにて、オープン競技として実施されました。

 

~研修支援班 「福祉授業」について~
 福祉授業では、「視覚障害について」「点字」「盲導犬」など様々な内容を扱っていますが、今回は秋田市立広面小学校と秋田市立寺内小学校での点字の学習について紹介します。
 広面小学校では、「キャラクター図鑑をつくろう」というテー
マで、立体コピー紙に印刷したキャラクターに点字で名前や特徴を書き加え、視覚障害のある友達にも読んでもらえる図鑑を作りました。この学習では、点字使用の方にとって、点字での説明や触って確認できる情報など、多くの情報が大切であることに重点を置いて活動を設定しました。二人一組になり、触って分かってもらえるためにはどのような説明をすると良いかを友達同士で考え、点字盤を使ってキーワードを書きました。「スギッち」の図鑑を作っていた児童は、「木」や「緑」と書いたり、「ミッキーマウス」を作っていた児童は「ディズニーランド」や「ねずみ」と書いたりしていました。普段見ているキャラクターを説明する難しさも実感した様子が見られました。
 寺内小学校では、2つの体験活動を設定しました。1つ目は、アイマスク体験です。二人一組になり、一人がアイマスクをして東北地方の地図を示した立体コピー紙を触り、秋田県にシールを貼るという活動でした。ペアの人の言葉に耳を傾けながら、指の感覚で秋田県を探しました。アイマスクをしていた児童からは、「友達の言葉が無いと貼ることはできなかった」や「安心感があった」など、視覚に障害がある人にとって言葉が大切であるという感想を聞くことができました。2つ目は、点字打ち体験を行いました。点字で名前を書くことを目標にして、50音の基本となる「あいうえお」の書き方や点字盤の使用方法について学習しました。

 

~生活情報支援班 「あいサポート教室」について~
 この教室は、中途で何らかの視覚障害をもった方を対象に、音声パソコンや白杖歩行、電子レンジ調理など、生活の向上を目指した支援を行っています。ここでは今年度の受講者の活動について紹介します。
 受講者の1人は、墨字の読み書きができなくなったことで、聞くことが中心の生活になっていましたが、音声パソコンで日々の思いを電子日記として付けられるようになりました。
もう1人の方は、デスクワークにパソコンを活用してきた方で、音声パソコンで業務を円滑に行お
うと取り組んでいます。また、白杖歩行の練習にも積極的で、単独歩行にも自信がついてきました。さらには、安全にできる電子レンジ調理にも挑戦し、数種類の調理が1人でできるようになりました。 
 「やろうと思えば吉日」そうした思いに、少しでもお手伝いをさせて頂けたらありがたいです。

 

書籍紹介
「同行援護ハンドブック―視覚障害者の外出を安全に支援するために」
著:松井 奈美 日本医療企画  価格:2,160円       
 本書は、「同行援護」制度や、情報支援と情報提供、代筆・代読をはじめとする「同行援護」に必要な知識や技術をまとめています。視覚障害者の外出をサポートする専門職に加え、家族介護者やボランティアなど、 同行援護や移動支援にかかわる多くの方々に活用していただけます。

「白杖歩行サポートハンドブック 地域で暮らす視覚障害者のために」
著:山田 幸男、大石 正夫、霜鳥 弘道 読書工房  価格:1,600円
 本書は、白杖歩行をアシストする、いわゆるアシスタントの勉強会のためにつくられたテキストです。
伝い歩きや方向のとり方などの移動方法、白杖歩行の実際の方法を解説するほかに、視覚障害者に多い転倒や骨折を防ぐための基礎体力作りについてや、著者らが考える地方における白杖歩行訓練のサポートのあり方について紹介した本です。

「小・中学校における視力の弱い子どもの学習支援 ~通常の学級を担当される先生方のために~」

著:日本弱視教育研究会 企画、香川邦夫編、千田耕基編 価格:2,200円
弱視児をどう理解し支援するか、通常の学級を中心に,学習環境の整備や各教科等の指導方法の工夫などが、具体的に紹介されています。

 

御相談のお問い合わせは秋田県立視覚支援学校 ロービジョン支援センターへ御連絡ください。
相談支援担当 菊地雄平・長崎雪子・渡部麗子・佐藤加奈子・佐藤友紀子
 

本文はここまで

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