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クローバー8号(12月22日)

視覚障害と映画

 今回は、視覚障害者がどのようにして映画を楽しんでいるのか、本校教員が実際に使用している方法を紹介します。その一つとして、UDcastというアプリケーションについて紹介します。

UDCastとは?
 映画・映像・放送等の「音声」をスマートフォンやタブレット端末に聞かせると、字幕表示、音声ガイド再生等を行うことのできるアプリケーションです。映像の音声を同期して、字幕・音声、手話を切り替えて表示再生が可能なものです。(http://udcast.net/index.html
 このUDcastには、聴覚障害者用字幕、視覚障害者用音声ガイド、手話、多言語字幕の機能があります。視覚障害者用音声ガイドについて詳しく説明します。

視覚障害者用音声ガイド
 スマートフォンで完全同期された「音声ガイド」を聴くことが可能です。各施設でiPod touch等の貸出端末を用意すれば、簡単に対応出来ます。劇場公開映画における「邦画・アニメーション」の視覚障害者用音声ガイドの付与率は現在1%以下ですが、このシステムが映画業界で導入されれば、視覚障害者の芸術へのアクセス保障が一気に拡大されます。(引用:UDcastホームページ)
 対応作品は限られていますが、この機能を使うことで、視覚障害者でも映画館で音声ガイドを聴いて、映画を楽しむことができます。

対応作品(音声ガイドのみ一部)
『海賊とよばれた男』『聖の青春』『この世界の片隅に』『だれかの木琴』
『秘密 THE TOP SECRET』『ONE  PIECE  FILM  GOLD』
『すれ違いのダイアリーズ(吹替音声+音声ガイド/吹替音声)『起終点駅ターミナル』など

 以前紹介したサピエでは、映画の音声を抜き出し、そこに音声ガイドをつけたデイジーの映画「シネマデイジー」がありますのでチェックしてみてください。

 

ワンポイントアドバイス・書字編 ~正しい漢字を書くために~
 低視力の子どもは、漢字の一点や一画が見えにくいために、読み間違いをしてしまったり、書き誤ったりすることがあります。漢字を間違えてしまう大きな原因は、「漢字を正確に習得していないこと」です。正しい漢字を書くために必要な支援について考えてみたいと思います。

1 間違い漢字  
 間違った漢字とは、①点画の過不足(多かったり、少なかったりする)。
②点や線の方向に誤りがある。③接筆部分で「突き抜ける」「離れる」などの混同がある。④似た部品(偏やつくりなど)を書いてしまう。⑤位置や大きさなどのバランスが悪い。⑥終筆部分の「とめ」「はね」「はらい」を混同してしまうなどがあげられます。

2 速さより正確性を意識  
 新出漢字については、一点や一画がよく見える大きさで提示して、正しい文字を認識することが大切です。また、視覚だけではなく、漢字の構成部品を言葉(音声)で補いながら、覚えることも正しく認識するために大切となります。
 「書き」と「読み」の学習では、最適な文字サイズも変わります。スムーズに読むためには、ある程度の文字数が一度に視野に入る必要があるため、読書ができる文字サイズの中でも、小さい文字サイズになるようにします。また、新出漢字の学習など、細部をみる学習では、視認性の高い大きな文字サイズが必要となります。
視力値と読書用文字サイズ(理論値)
近距離視力(読書用文字の大きさ ポイント)
1.0(8P)、0.9(9P)、0.8(10P)、0.7(12P)、0.6(14P)、0.5(16P)、0.4(20P)、0.3(28P)、0.2(40P)、0.1(80P)
※近距離視力用の視力標を用いて、30cmの視距離で測定する視力

3 筆順は正確に 
 筆順は、その漢字を書く際に、最も書きやすく、無駄なく形を整えて書くことのできる筆運びの順番ですので、正確に覚えるように支援することが必要です。

☆ 指導・支援で気を付けることは
 漢字の書き方について、本人は正しく書いているつもりでも、線が少しはみ出して誤字に見える場合もあります。そのような場合は、すぐに間違いとせずに、字体を正しく理解しているかどうかを確かめて、正しく書く指導につなげていきます。
 いったん定着した誤字については、子ども自身が、誤字であることに気付いていないケースも多いです。間違って覚えていないかは、ノートや作文などをチェックして、既習漢字の書き誤りを確認し、正しい漢字に修正していくことが大切となります。
〈参考図書:『視力の弱い子どもの理解と支援』教育出版 他〉

 

スマートフォンやタブレット端末の ~アプリの紹介~

 皆さんは読書を楽しんでいますか?私は、これまで点字本やDAISY、ピンディスプレイを利用して読書を楽しんできました。しかし、最近はiPhoneのボイスオーバー(音声読み上げ)を使って電子書籍を読むことが増えました。今回は、私が電子書籍を読むために使っているアプリのKindleを紹介します。

 Kindleは、事前にAmazonで購入した電子書籍を読むためのアプリです。このアプリは、ボイスオーバーに対応しており、メニュー操作から書籍の読み上げまで、ボイスオーバーを使ってスムーズに行うことができます。書籍の読み上げ方は、全文読み上げだけでなく、文字・行単位で読み上げさせることも可能です。

 このアプリで気に入っている点
 ① いつも持ち歩くiPhoneでちょっとした時間に読書ができる
 ② 最後に読んでいたページが記憶され、簡単に続きから読める
 ③ 発売日に購入して読むことができる

 私は映画のノベライズ作品が好きなのですが、今年はKindleのおかげで『スターウォーズ』や『君の名は』等の話題作をリアルタイムで読むことができました。

 このアプリの欠点
 全ての電子書籍がボイスオーバーに対応しているわけではない
 
 Kindleは書籍の購入前にサンプルを試せるようになっているため、私はこれを利用し、ボイスオーバーに対応していることを確認してから製品版を購入するようにしています。

 今回はKindleを紹介しましたが、iPhoneのアプリにはこの他にもDAISYを再生できるもの、点字ファイルを読み上げてくれるもの等があり、様々なスタイルで読書ができるようになっています。自分に合った読書のスタイルを見つけてみてはいかがでしょうか?
アプリをきっかけに読書が好きになるかもしれません。(文責:本校職員 工藤 輝希)
 

~視覚障害訓練等指導員の実践~

 10月7日発行の5号で取り上げた、「校内のプロフェッショナルの紹介~視覚障害訓練等指導員~」の生活情報科での取組を紹介します。視覚障害訓練等指導員(本校職員) 落合 久貴子

 「抹茶茶碗を作ってみたい!」「自分で作った抹茶茶碗でお茶を点ててみたい!」そんな会話から始まり、自分で作った抹茶茶碗で茶道体験をするまでに至った様子です。
 茶道体験では、お茶を点てるだけでなく、和菓子作り体験を学習活動に取り入れ、実際に秋田市内の和菓子店に出かけ教わることにしました。日頃、外出の機会が少ない方にとって、この『外出』は絶好のチャンスになります。学校以外に出かけるということは、身だしなみ・公共の乗り物への乗車、お金の支払い、外食等々、様々な機会に恵まれます。そこで、日常生活動作では「身だしなみ(肌の手入れ・化粧)」を、移動・歩行では「白杖歩行」を行い、不安感を軽減した状態で楽しく外出を楽しめるようにしました。指導・支援では、以前から身に付けている(獲得している)動作に、視覚障害によって制限された動作を新たな方法として身に付けられるよう、学習活動で取り上げました。

・視覚に頼らないブラインドメイク。
・手引き歩行や白杖歩行の練習。学校では、日常生活動作で身だしなみ、歩行学習で白杖歩行を練習しました。
・和菓子作り体験。初めての体験でも、手先の感覚を活用して作成。フランス料理にも挑戦。
秋田市内の和菓子店へ校外学習。外食もしました。
・自分で作った抹茶茶碗で茶道。
・ご本人のやり方を生かしつつ、どのように工夫・改善することで、動作の改善や新しい方法の獲得につながるのか、一緒に考えながら取り組んでいきたいと思います。
 

本文はここまで

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